インドネシアのアレルギー事情について

アレルギーユニバーシティ2番目の取材記事はなんとインドネシア取材の記事をお送りします。

世界の先進国でアレルギー疾患がどんどん増えているのは生活が清潔になったことが原因の一つと言われています。じゃあ、現在、発展途上の国はどうなっているのだろう?と思い、今回は思い付きでインドネシアのジャカルタへ取材に行ってまいりました。

取材をさせて頂いたのは、ジャカルタの日本人コミュニティでは有名なSOSクリニックの医師、ダイティア・ジョハン・アガハリ先生です。

ジョハン先生は日本語堪能な華僑系シンガポール人医師です。今回は友人の松田由美氏の主治医ということで、ご紹介を頂き、取材に応じて頂きました。

ぜひご覧くださいね。

なぜ、ドクターになろうと思われたのですか?

やはり、人を助けたいと言う思いがあったからです。父は服飾関係でしたが、勉強して医師になり、奨学金をもらって日本にも留学しました。

日本で外国人医師が勉強するためには二つの方法があります。一つは、大学院に在籍することです。大学院であれば患者さんを診ずに研究に専念する形になります。

もう一つは臨床症例です。こちらについては、本当は日本人しか携わることができないのですが、厚生労働省が実施する日本語のテストや医学に関わるインタビュー等を受けて合格することができれば、二年間を期限とした免許を取得することができます。その免許があれば患者さんを診断することができるのです。

しかし、後者は難しいこともあって、インドネシアから留学した場合は8割が大学院に在籍することになります。

こちらのクリニックには、日本人の方が多いのでしょうか。

私自身が診察しているのはおおよそ1か月で300〜400人ほど。他の先生は、おそらく100人くらいではないでしょうか。

以前は、もっと多かったですね。今は、新しいクリニックがたくさんできていますから。

こちらには様々な診療科がありますが、一番多い病気は何でしょうか?

やはり、感染症ですね。風邪や腹痛などウイルスが原因となっている病気です。インドネシアのどこのクリニックでも、よく見られる病気です。

アレルギーに関しては、いかがでしょうか。

アトピーに関して言うと、インドネシアと日本はほぼ変わらないですね。水や食べ物の影響でどんどん増えてきています。

アレルギーの主は皮膚や鼻で、インドネシアには花粉症のような症状もみられます。こちらには乾季から雨季にかけて花がいっぱい咲きますので、その花粉の影響ですね。

喘息についてはジャカルタで急速に増加しています。排気ガスやホコリも多いからだと考えられます。加えて、ピーナッツや小麦アレルギーといった食物に関わるアレルギーも多いですね。

全体的に日本と傾向は似ているのですが、こちらと比べて日本の方が診断が早く、薬に関しても少し進んでいると思います。

インドネシアのプライオリティーはまだ感染症にあり、子供のアレルギーに関してはまだ政府の努力がそこまでなされていないと感じています。

インドネシアには、医療用医薬品とOTCの他、その中間にあたる薬もあると伺いました。

薬に緑のマークがあるものは、薬局でも処方箋なしで誰でも購入することができます。青色のものは、基本的には処方箋が必要ですが、なくても時々、買うことができます。赤いマークになると、処方箋がなければ絶対に買うことはできません。

インドネシアは民間療法が盛んですが、こちらのクリニックで取り入れていらっしゃるのでしょうか。

民間療法には特別なライセンスが必要なので、こちらでは行っていません。

薬の認可に関して、インドネシアは厳しいのでしょうか?

そうですね、10年前から厳しくなりました。

現在、インドネシアには国民保険が導入されたのですが、やはりコストがかかりますのでジェネリックを推奨するなどして、コストダウンが進められています。

こちらのクリニックは、院内処方されていらっしゃるのでしょうか?

できるだけ、院内処方にしています。

もし、院外処方にしてしまうと、日本人のお子さんや奥さんたちに対して十分な薬の説明ができないからです。誤った方法で服用してしまうと困りますので、私が飲み方や混ぜ方などを説明しています。

日本の患者さんを診ていて、違いなど感じていらっしゃいますでしょうか?

私はあまり問題を感じていませんが、他の先生方は文化の違いに戸惑っているのではないでしょうか。病気というのは、体の問題だけではなく、精神的、文化的な問題も抱えています。

日本の方はストレートに表現しないことも多いので、受け取り方によっては診察に影響が出てしまうこともあるようです。

また、日本ではどこに行くにも自由で友達もいる環境で過ごしていた方が、こちらに来てからはずっとアパートにいるということも耳にします。相談するところも日本語ができる精神科もありませんので、ストレスなど精神的な病気が増えてきていますね。

そのままの状態で日本に帰っても大変なので、薬を飲み、カウンセリングを受けながらコントロールしていくことになるかと思います。

アレルギーの原因で一番大きいのは何でしょうか?

一番はホコリやダニですね。二番目はおそらく食べ物や薬ですが、世界中を見渡してもホコリが最も大きな要因ではないでしょうか。

工事や開発などの影響もありますしね。

どのような治療をされていらっしゃるのでしょうか。

原因にもよりますが、喘息の方であれば気管支拡張剤を使います。ステロイドはあまり使いませんが、気管支拡張剤のスプレーが効かない場合は、少し処方することもあります。

また、1日3回服用するような頻度の高い抗ヒスタミン剤は眠くなりやすいので、仕事や勉強に影響を与えないよう長い時間、効果のある抗ヒスタミン剤をよく使います。

アトピー性皮膚炎に関しては、スキンケアがメインになりますか?

そうですね。できれば、肌が乾燥しないようにしたいので、あまり痒くならない特別なクリームを使っています。

インドネシアの国民保険について教えてください。

国民保険が始まったのは5、6年ほど前ですので、まだまだこれからという感じです。プライベートの保険に加入している方は、おそらく10%未満ではないでしょうか。

現在、インドネシアの病院はA、B、C、その下の小さい診療科と、いくつかのタイプに分かれています。貧困層であっても、一番下のクラスの病院を受診することで必ず治療を受けることができます。

ただ、クラスによって支払う保険料が異なり、月に1人あたり8万ルピーの場合もあれば、3万ルピアや2万ルピアのこともあります。その保険料を払っていれば、病気にかかったときにカードを提示し、薬をもらうこともできます。

そして、一番下のクラスの病院で治らない場合は、どんどん上まで紹介してもらうことができるという制度です。

この制度も発展途上ですが、病院がどこも混んでいるということも問題視しなくてはなりません。診察を受けるまでに6時間くらいかかることもありますし、ベッドがあるかどうかも気にしなくてはなりません。

始まったばかりの制度なので、あと2、30年経つと日本のようなシステムになることができるかもしれないですね。

感染症は多いのでしょうか?

インドネシアの気候も感染症を招く一つの大きな要因です。

加えて、国民が生活する衛生状態も整っていません。きれいな水やトイレはないですし、住むところも良くありません。

たとえば、一軒家で窓も水道もトイレもないようなところに10人くらい寝ているということも珍しくありません。マラリアは10年前と比べると格段に良くなっていますが、デング熱や結核はまだみられます。

結核についてはかつて、オランダからの支援で薬が無料だったのですが、今はそうではなく、高い薬を買わなくてはなりません。しかし、1か月の給料、3倍もする高価なものなので薬を買うことができず、耐性菌も出現するといった状況になっています。

まとめ

私にとってジャカルタ訪問は4年ぶり、2回目でしたが、大きく変わった点が2つありました。まず、タクシーがすべてスマホで呼び出すようになっていること、そして、高層ビルと大規模なショッピングセンターが増えたことです。

相変わらずの交通渋滞で、空気も悪く、トヨタの弊害を感じましたが、近く地下鉄も開通とのことで、交通渋滞が緩和されていくのかなと期待しています。

今回、自分ではまだまだインドネシアとかは発展途上なのでアレルギーは比較的少ないだろうと思っていたら、実はそうではなく、すでに増えていることが分かりました。

生活がどんどん西洋化、清潔化、近代化していくと共にアレルギーは増えていくのだなと改めて感じた次第です。

今回の取材は前回の不妊治療施設取材@ジャカルタ訪問と同様、レストラン美卯のオーナー松田由美さんのご協力で取材を行うことが出来ました。

ジョハン先生、由美さん、貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

執筆:アレルギー大学編集長 池上文尋

<関連サイト>

SOSチプテクリニック

https://www.internationalsos.com/locations#Indonesia

美卯

http://www.miujakarta.com/

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