医食同源という言葉がありますが、まさに私たちが心身共に健康でいるために‘食’はとても重要な意味を持っています。その中でも、有機栽培で作られた野菜はアレルギーをお持ちの方を中心に認知度が上がり、今では取り扱うお店も増えてきました。
今回は、約10年前から青森県にて有機野菜を中心に取り扱い、今ではたくさんのファンをお持ちでいらっしゃる「ふるさと21」の代表取締役 森隆幸さんにお話を伺っております。有機野菜への想いや会社を起こされた経緯などを聞かせていただきました。
ふるさと21を作ったきっかけについて教えてください。
もう10年前になりますが、かつてはメディアフロント企業組合という会社で、パソコンサポートやシステム保守を行う会社にいました。
有機農家さんが認証検査のために栽培管理をするツールとして、栽培管理記録簿というものがあるのですが、かつては手書きで書いていたものをパソコンでも入力したいという要望に応えるべく、これまでのものを拡大してサポートしていく仕事をしていました。
その過程で、インターネット販売が主流になりつつある頃だったので、農家さん側からも販路を開拓したいという相談があり、ふるさと21を立ち上げることになりました。要するに、インターネット直販サイトですね。
最初は、FAXを学校の職員室に持ち歩き、直接、購入していただいた時期もあるのですが、時代はネット販売だろうということで全国、産地直送で取り組み始めました。
所属していたメディアフロント企業組合の中では、ふるさと21として4、5年ほど活動していました。次第に、売り上げの殆どがふるさと21になっていったのですが、企業組合という形態だと、地域のものに密着していないと不便な部分もあり、県外との契約も上手く取り入れられないという状況がありました。加えて、それまでに有機野菜の販売が軌道に乗っていたこともあって、2013年にふるさと21を株式会社化して独立させることになりました。
なぜ、有機野菜にこだわったのでしょうか?
ひとことでいうと生産者への感謝です。
私は幼少期の頃、アレルギー体質でした。さらに、喘息もあり病気しがちで、体が弱かったことが関係しています。そういう状況の中で、両親はあまり薬に頼らず食事をメインに克服しようとしてくれ、その時にお世話になったのが有機栽培の作物だったということが大きいですね。
また、これからどんどん有機農家が少なくなっている現状をどうにかしたい、拡大してこの先の未来につなげて子供達に食べさせてあげたい、という気持ちがありここまで続けてくることができました。
有機野菜を扱う会社は数多くありますが、ふるさと21が青森県むつ市という土地でうまくいったのはなぜでしょうか?
ここは本州最北端の青森県下北半島という土地ですが、インターネットの発展にうまく絡んでこられたことが大きかったのかなと思っています。
大手がだんだんと力をつけてきたところに、私たちは後発で参入したわけですが、それでも10年間続けてこられたという自信もありますし、当初はインターネットの普及に合わせてネット上での販売に絞りました。
注文が入ったら農家さんから発送していただく、という産地直送販売ですね。資金力もなかったので、買付けや在庫を持つことができなかったのですが、逆にそれが鮮度や農家さんの信頼的な部分にもつながってきたのかなと感じています。
やはり、農家さんには一緒にやっていきたいという気持ちになって欲しいですし、私たちとしてもチームとして取り組んでいきたいという考え方がありますので、取引のような話は殆どしないですね。実際に、農家さんが余ったものを売るようにしています。
例えば、当初から取引のある有機農家さんを例にあげますと、自分の顧客もいらっしゃるので、収量の半分をそちらで販売しますが、残った半分は全て地域の市場に卸すしかない、という状況でした。特別な栽培方法ですから、本当は付加価値をのせて一般のスーパーに並ぶものよりも高い価格でなければ暮らしていけないはずなのですが、売れ残ってしまってはどうしようもないということで市場に卸すと、他と同じ値段になってしまいます。さらに、自分の顔も名前も表に出てこないので、一切ファンが作れないことになってしまいます。
そのため、有機農家さんは栽培ですごく手間がかかり忙しいにも関わらず、自分たちで何とか販路を見つけなくてはならないという状況でした。
それを少しずつインターネットでお手伝いさせていただき、いろいろな方法を考えながら商品開発も行いました。消費者のニーズに沿ったものを一緒に考えてファンを作っていくという方法だったので、農家さんたちの信頼につながったのだと考えています。
また、売れた分だけ仕入れるというシステムなので、農家さんからするといつでもやめられる、いつでも始められるという利点があります。まさに、買い付けができない資金力のなさを、そちらへうまく転換できたのかなと思います。
ふるさと21は、リンゴ農家さんから始めたのですが、5年ほど経った頃には半分市場に卸していたものが、ほぼふるさと21で販売するようになっていました。そうなると当然、収益は上がりますし、固定客につながるので農家さんは安定した暮らしができ、拡大する資金力も蓄えられるという効果がありましたね。
ふるさと21という名称には、地域の故郷において大切なものを守り、つないでいくお手伝いをしていきたいという気持ちが込められています。今は、有機農家さん自体が少ない時代ですが、大地を守り、環境保全につながっていくのは有機農法が不可欠ではないでしょうか。
これまで経験された最大の危機は何でしょうか?
やはり、東日本大震災ですね。本当に、やっていけなくなるかもしれないという状況でしたし、災害なので受け入れるしかないと思いました。
青森県はあまり被害がなかったのですぐに復旧できたのですが、メインのお客さんが首都圏なので、東北の農家さんからの流通が止まってしまったことが大変でしたね。その頃はまだ、メディアフロント企業組合の時代でしたが、右肩上がりでやってこられた中で、突如ぶつかった試練でした。
それでも何とか、大震災を乗り越えて会社設立にこぎつけることができましたが、近年の夏の暑さや大雨といった異常気象は、農作物に大きな影響を与えています。突如、保管していたものが全て傷んでしまう、収穫予定だった量が全く取れないという事態に陥りました。
だんだんと消費者や有機野菜を取り扱う競合店が増えていますので、必然的に農家さんの取り合いにもなってしまいますよね。
どのような方々が利用されているのでしょうか?
40代以降のお客様が多いですね。ご家庭で購入されているので、一般のお客様に関しては、男女の区別はあまりないのかなと思います。
有機栽培で作られた野菜やフルーツ、お米は通常の1.5倍くらいの価格になりますし、産地直送なので送料もかかります。それなりに高いお買い物になってしまうので、どちらかというと少しお金に余裕が出てくる40代以降や富裕層の方が多いですね。また、健康やオーガニックに対する知識に触れやすいのは東京や大阪などの大都市圏なので、そちらのお客様が非常に多くなっています。
最近では、低速ジューサーで人参ジュースを作ってゲルソン療法に取り組んでいる方が増えており、人参10kgを1週間に1箱購入されるという方もいらっしゃいます。
ご夫婦でゲルソン療法をされていると、ジュースができるまで人参を5本も6本も使うわけです。消費量がすごく多いのですが、その方はゲルソン療法をすごく楽しんでやっていらっしゃいますね。
皮と身の間に一番栄養があるので皮付きで使いたい、そうなると、せっかく健康のためにやっているのだから、農薬や化学薬品が使われていない人参を使いたいというお客様が多いですね。
有機JASを取得することは難しいのでしょうか?
化学合成された農薬を使わない畑で2年以上栽培するというルールはありますが、費用面での負担が難しくさせていますね。
有機JASを取得するまでの流れをお伝えすると、まず講習を受講しなくてはいけません。日本には有機JASの認証団体が結構あるのですが、お世話になりたい認証団体を農家さん、あるいは行政など知識のある人につないでもらって呼ぶことになります。
その時の旅費交通費や宿泊費、講習費用も全て農家さんが負担しなくてはいけないので、個人で有機農家をされている場合は負担が大きく、なかなか取り組めないという現状があります。
さらに、抜き打ちで検査もあるので、それに対応していかなくてはなりません。プロ意識を強く持たなくてはいけませんし、万が一ルールを破ってしまった場合には、悪質なものは資格の剥奪に加えて多額の罰則金があります。そういう厳しい規則のもとで栽培することになるので、真剣に取り組んでいける農家さんは限られてきますね。
私たちは有機農家さんを増やそうという活動も行っており、昨年では青森県で20組ほど有機JASを取得していただきました。個人だと負担が大きいので、講習を受けたい人を集めて、こちらで会場を借りて講師の方を呼ぶので、農家さんには1万円くらいの認証費用だけを負担していただきました。
去年は、もともと有機農法をされていて有機JAS未取得の方や、一般の農法をされていた方、興味はあるけれど方法がわからない、興味があってもチャンスがなくて踏み込めない、という方々をうまく汲み取って進めることができました。
有機農法の最大のポイントは土だと思いますが、農家さんの取り組みを間近に見ていてどのように感じられていますか?
農家さんは、本当に多種多様ですね。各地でグループを作ってされている方もいますが、基本的に有機農家さんは単一です。いろいろなことを勉強された上で自分のものに転換していくというやり方ですね。
その土地にあった土の作り方やそこでとれる野菜、また、野菜に対しての土の作り方もあるので実戦でしか培えないものがそこにはあります。
ガイドラインやテキストに沿って耕して肥料を入れ、虫が出たら薬を撒くといった流れであっても、やはり、土のことを理解していないと野菜を作ることはできません。
一般の農法でも難しいところを、環境保全型農業であれば農家さんの観察力もかなり必要となりますし、日々、土と向き合って畑に入らなくても匂いを嗅ぐだけで土の状態がわかるという方もいらっしゃいます。
化学物質過敏症やアレルギーの方も有機野菜を求めていらっしゃいますか?
継続的に利用されている方もいますし、途中で購入がなくなった方もいます。やはり、アレルギー症状の度合いや重度によって、いくらオーガニックだからといっても反応してしまうことがあります。
梱包資材ひとつ取っても合う、合わないがありますよね。「新聞紙を入れないで欲しい」「ガムテープは使わないで」という声や、反対に「ガムテープで完全に密閉して欲しい」など、個別の対応ができる農家さんは本当に少ない状況です。もちろん、ずっと対応してくれている農家さんもいますが、余裕が持てないところもありますよね。そのような中で、こちらも農家さんと相談しながら対応をしています。
ふるさと21さんから、アレルギーの方へ向けてメッセージをお願いします。
私もかつて、アレルギーで苦しんでいました。一時期は、発症してしまうと喘息まで進行してしまうこともありました。
しかし、例えば抗生物質を加えられて育った卵ではなく、自然の餌を食べて平飼いしている有機卵を食べるとアレルギーが治ったのです。私の実体験でいうと、体は安心安全なものを欲しているのかなと考えています。
以前、農家さんと話していた時に、自然生態系に沿って成長していない農産物はどこか細胞がおかしくなっているから、人間の体が拒絶するのではないかと話されていました。私自身、オーガニックのものを食べるとアレルギーが発症しないという経験もありますので、有機野菜を食べるとスッキリして体が喜ぶのではないでしょうか。
アレルギーは非常に怖く、子供が給食を食べてアレルギーで亡くなってしまったというニュースも耳にします。オーガニックは、そういう方たちへ向けられた思いがこもっています。
かつて、病気をされてアレルギーで苦しんでいる方が、初めてこちらのリンゴを購入して食べた時に、生まれて初めてリンゴの味がわかったということを泣いて喜んでおられました。そういうきっかけ作りになれれば嬉しいですよね。
しかし、現在、暮らしていく中でAllオーガニックにできるということは、相当な覚悟とお金が必要でそう簡単にできるものではないと思っています。
私たちは有機野菜を取り扱っていますが、決して、慣行農法を全否定しているわけではありません。かつて、日本の食料自給率を上げるために大量生産に取り組んできた時代がありますが、今は流れが変わってきていますよね。
全世界的にオーガニックが注目されていて、フランスやアメリカではオーガニックの自給率が30〜40%です。また、同じアジアの中国や韓国と比較しても、日本は0.2%と低いのが現状です。
諸外国の流れでは、農薬は何かしら害を及ぼすものであり、自然生態系に沿って作ることができれば環境保全にもつながり、体にもより良いものが作れるのではないかという考え方になってきています。今は、農産物の質も注目されており、その中の一つがオーガニックではないでしょうか。
医療業界からも注目を浴びていますが、まだ値段が高いのが現状です。でも、みなさんの手元に届くくらいの量を作ることができ、それが主流になってくれば、いつかは慣行農法の野菜たちと同じ値段でお届けできると思っています。
<まとめ>
私たち、そして未来の子供達に安心安全なものを食べてもらいたいという想いは多くの方が抱いているかと思いますが、それを形にすることはとても大変です。
しかし、ふるさと21さんは、青森という土地から日本の食を変えていこうと日々、努力されており、今では全国にたくさんのファンがいらっしゃいます。
食を変えることで健康になり、アレルギーにも良い影響を与えていくこの試みを是非、広めていければと思っております。
参考サイト
ふるさと21
https://www.fsec.jp/
楽天店
https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E3%81%B5%E3%82%8B%E3%81%95%E3%81%A821/
Amazon店
https://www.amazon.co.jp/s?ie=UTF8&me=A3KD4YY1U5BA4J&page=1
YAHOOショッピング店
https://store.shopping.yahoo.co.jp/fs21/
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。