この度、アレルギーに関するとても興味深い研究が発表されました。すでにお子さんのいらっしゃるご家庭だけではなく、若い人達を含め、たくさんの方々にお届けしたい情報です。
国立成育医療研究センターアレルギー科の大矢幸弘医長、山本貴和子医師らのグループは、2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患の有症率との間には有意な関連があり、抗菌薬を使用した群でアレルギー疾患の発症リスクが高くなるとする研究結果を発表しました。
アレルギー発症の仕組み
近年、アレルギーを有する患者さんは増加傾向にありますが、そもそもアレルギーとは一体どうして起こるのでしょうか。
私たちは、日常生活を送る上で、目に見えるものばかりと接しているわけではありません。大気中に浮遊しているウイルスやあらゆるところに潜んでいる細菌といった元々、体内には存在しないものとも日々、接しています。
ウイルスや細菌の脅威にさらされながらも、元気に生活できているのは免疫という仕組みのおかげです。
免疫とは、体に異物が侵入してきたときにそれを異物、つまり抗原と認識して攻撃することを指しますが、これが過剰に反応してしまうと異物だけではなく自分自身に対して攻撃をしてしまうことがあります。これをアレルギー反応と呼んでいますが、小児期からアレルギーが発症するとアトピー性皮膚炎、年齢が進むと食物アレルギーといったように、形を変えながら様々な症状が現れてアレルギー・マーチにつながることがあるため、様々な研究がなされています。
幼児期の抗生物質使用が及ぼす影響
発表された研究の対象者は、2004年3月〜2006年8月に国立成育医療研究センターで出産を予定していた一般集団の1701名の妊婦と生まれた子供1550名です。そのうち、回答が得られた902人について、2歳までの抗菌薬使用の有無と5歳児のアレルギー疾患の有症率を比較しています。
研究データの解析によると、2歳までに抗菌薬を使用した子どもは、使用しなかった子どもと比較して、その発症率は気管支喘息で1.72倍、アレルギー性鼻炎で1.65倍、アトピー性皮膚炎で1.40倍でした。
研究においては、セフェム系抗菌薬は最も一般的な抗生物質であり、マクロライド系抗菌薬は二番目でしたが、セフェム系抗菌薬と気管支喘息およびアトピー性皮膚炎、マクロライド系抗菌薬とアトピー性皮膚炎が関係していることがわかりました。また、それ以外の他のアレルギー症状との関連も示唆されており、さらなる研究調査が必要だと考えられます。
本研究では、抗菌薬を服用するタイミングや経過については確認されていませんが、アレルギー疾患の発症を防ぐためのアプローチとして、幼児に向けた適切な抗菌薬の使用について言及しています。
抗菌薬の使用によって耐性菌が作られてしまうことや、腸内環境が乱れる可能性も指摘されていることから、その使用や影響について新たな発表があれば本サイトでもご紹介していこうと思っています。
<参考>
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