花粉やダニ、金属などでアレルギーが引き起こされることはよく知られていますが、私たちが毎日食べている農作物の成長過程で使用される農薬でアレルギーになっているとしたら…
今日は、目に見えないからこそ知っておきたい、アレルギーと農薬の関係について取り上げたいと思います。
食物アレルギー診療ガイドライン2016によると、食物アレルギーは乳幼児での発症が一番高いとされています。その割合は、10歳以下でおよそ9割となっていますが、幼児期の食物アレルギーは自然と治るケースが多く、成長するにつれて減少することも特徴の一つです。
一方、近年では大人になってからアレルギーを発症することも増えていますが、大人の場合は幼児期と別の傾向があるという報告もあります。厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養指導の手引き2011によると、幼児期は鶏卵や牛乳によるアレルギー症状が消化管や皮膚へ現れるのに対し、大人では果物や野菜によって口の中の違和感やかゆみを感じる口腔アレルギー症候群になる傾向が強いとされています。また、大人は幼児に比べて耐性が獲得しにくく、治癒しにくいという面も持ち合わせています。
卵や牛乳と比べると、果物や野菜によるアレルギーはあまり想像しにくいかもしれませんが、この背景の一つとして、農作物に残っている農薬の影響も指摘されています。
農作物を育てる過程では、害虫に強い品種を作る、ビニールシートで雑草が生えにくい環境を作るなどの工夫をしても、ウイルスや雑草などの影響を避けることは難しく、どうしても農作物の成長に支障をきたしてしまうことが多々あります。
かつて、日本における高度経済成長の下では大量生産の時代を迎え、少ない人手でより多く収穫するために、効率の良い農業が望まれるようになり農薬の開発が急速に進んでいきました。
しかし、昭和40年頃から残留農薬による健康や環境への問題が取り沙汰されるようになります。農薬に関する販売や使用規制についての方針を定めた農薬取締法は改正を重ね、今では農薬の登録に厳しい審査を設けるようになり、厚生労働省は定期的に食品中の残留農薬についての情報を公開しています。
一見すると、厳しい基準をくぐり抜けているので、人体や環境には問題を及ぼさないと思われるかもしれません。しかし、実はネオニコチノイド系農薬が子どもの発達に影響を及ぼしているのではないかと世界中で議論されているのです。
ネオニコチノイド系農薬は害虫を駆除する目的で使用されていますが、水溶性のため使いやすく、様々な農作物に対して使われている他、その成分はシロアリやハエの除去やペットのノミを駆除する製剤にも汎用されています。
便利なだけであれば良いのですが、水溶性であり効果が持続しやすいという点も相まって、ネオニコチノイド系農薬は農作物の内部にまで浸透し、洗っただけでは落ちないという性質を持っています。
また、近年はヒトの神経系に影響を及ぼす可能性があることやミツバチの減少、河川汚染などへの影響も懸念されており、昨年の4月にはEUでネオニコチノイド系殺虫剤のうち一部が使用禁止となりました。
しかし、国内ではここ数年、農薬を規制する世界的な流れに逆らうように農薬残留の基準が緩和される傾向にあります。
ここまでくると自分や周りの大切な人の健康を守るために何を基準にしたら良いのかわからなくなってしまいますが、農薬の使用を全面的に否定して避けるのではなく、その仕組みや私たちへの影響を知った上で食材を選ぶことが必要な時代になったのではないでしょうか。
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