東京ビッグサイトで開催された次世代ヘルスケアプロジェクト2020「第3回 ぐっすりEXPO~良質睡眠推進展~」に伺った時、特に目を惹いたのがこちらのブースでした。
実は私自身がアレルギーであり、かつ化学物質過敏症なので、カラダに負担をかけないものを常に探し求めているからです。
この日、運よく社長の梯氏もおられて、詳しく説明をして頂きました。そこで工場も実際に見てみたいと思い、「福岡の工場まで取材に伺っても良いですか?」と聞いたところ、ご快諾頂いた次第です。
そして、本社でのインタビュー内容をこちらの記事にしてみました。アレルギー持ちの方には必見の内容かと思います。
創業までの経緯を教えてください。
パシーマは、昭和22年に父が創業しました。戦後で物がない状況の中、糸を使って織物をしようと思っても材料がありません。どこに目をつけたのかというと、家庭用にあるお客さん用の布団から糸を取れば、材料を新たに調達しなくても良いと考えました。
脱脂綿の良さはたたきこまれていましたが、当時、脱脂綿の値段は高く、膨れない綿ということで布団には適していないと思われていました。それをずっと受け止めていたものの、父自身が病気になってパシーマへたどり着いたというわけです。
開発期間はどのくらいかかっているのでしょうか。
開発期間というよりも、父本人が困っているので自分のために作ったという感じですね。
なぜ、そういう方向に向かったのかというと、アレルギーの場合は病院に行って薬をもらうと一旦は治るのですが、また悪くなります。そして、また病院へ行くとより強い薬に変わります。それを繰り返すと結局、一番作用の強い薬をもらうことになるわけですが、と同時に父が言うには「この薬を飲むと、精神状態がおかしくなって自殺したくなるような気持ちになる」と。
このことを病院の先生へ伝えたところ、飲む量を半分にしなさいと言われたそうですが猛反発し、薬自体をやめてしまいました。しかし、やめたはいいけれども痒いし治らないからどうしたら良いのだろうと考えた時、脱脂綿を思い出したのです。脱脂綿もガーゼも医薬品でしたので、それで傷が治るのであればアレルギーも治るはずだと言う思い込みが始まりですね。
そういう経緯で脱脂綿とガーゼで試作品を作り、自分で使っていました。でも、洗濯をすると中の綿がバラバラになってしまうので、改良を重ねたのがパシーマ誕生の約10年前ですね。
特許も出願し、ある審査では特賞ももらって喜んでいたのですが、原理的に自分が良いと感じていたとしても、相手に伝わらなければ売れないので、いろいろな試験をして成績書を添付してもらうことにしました。
そういう意味ではパシーマのスタートは特許を取得し、成績書が得られた平成4年になりますね。
どのような検査をされたのでしょうか。
通常、布団の試験というと物性になります。保温性や吸水性、かたさや軽さなどです。
そうこうしているうちに、睡眠の勉強会があるということで半分イヤイヤながらも出席したのですが、専門用語が多く、当時は睡眠に関する本もなかったので全くわかりませんでしたが、何回か参加すると言葉が耳に馴染んでだんだんと内容がわかってきました。
参加されていたのは、半分が産業界、半分は大学の先生でしたね。懇親会では、私たちの製品や事業についてお伝えしたところ、東邦大学の奥平先生が「じゃあ、測ってみようか」とおっしゃってくださいました。
布団の中の温度は33度、湿度は50%がベストだと言われていたので、おそらくパシーマもそうではないかと調べてもらうことにしました。脳波は測定にお金がかかるとのことでしたので検査項目に入れていなかったのですが、先生が実験をされたところ良さそうな結果が出たということで、あわせて脳波の検査もしてくださいました。
しかし、有意差が出るまでには至らずその時にわかったことは、足元が温かくなり寝つきが非常に良くなるということです。こちらについては、有意差がありました。
その後も年に一度、他の方がどのようなことをしているのかリサーチも兼ねて参加していたところ、ある時、講師として来られた70代くらいの先生がいらっしゃいました。その先生こそ奈良女子大学の登倉尋實先生でした。
その先生にサンプルを送ったところ「子供の頃以来、よく眠れた」と返事がきたのです。その先生は何をライフワークにしているのかというと、リネンやコットンといった生活環境についての勉強や研究でした。
その先生が、色々と測定するとお金がかかるけれど、被験者の謝金と測定に関する消耗品だけ出してくれれば良いからということで、先生の勉強も兼ねて研究していただくことになりました。
パシーマには、途中で目覚めにくいという傾向があるのですが、それ以外に尿と血液の測定を通じて免疫力が上がることがわかりました。それが2000年くらいですね。アドレナリンが低くなって、リラックスして眠れることに起因します。
また、急性期タンパク質といって、血液中で緊急事態が生じた時に生成されるタンパク質があるのですが、それが増えるべき時に増え、減るべき時に減っているということも一緒に検証しています。
こういうエビデンスは一般の人にはなかなか伝わりにくいのですが、健康科学ビジネスセレクションズ開催の案内がきたので応募したところ、こちらで大賞をいただくことができました。
エビデンスに基づいて認めてもらったと非常に喜んでいたのですが、平成7年にポリプロピレンが発火の可能性があるということで暗雲が立ち込めました。布団の中には脱脂綿の他にポリプロピレンが15%含まれており、万が一そうなってしまっては困るということで、自分たちでも色々と実験をしました。そうして、数年前に材料を少し変えることにしました。
新しいものはよく考えてみると15%ポリプロピレンが混ざっているものと材料の表面は一緒です。外見には、何ら変化はありません。しかし、やはり同じような実験をして睡眠への効果が変わらないということを出しておきたかったので、いろいろな先生に相談したのですが、どの先生も過去に行った研究の繰り返しはしないということで断られてしまいました。
そんな折、東北福祉大学の水野一枝せんせいが応じてくださいました。その結果は、従来と変わらない寝つきの良さなどのほか、冬場の睡眠で深い眠りが有意に長く得られることもわかりました。
パシーマとアレルギーの関係について教えてください。
アレルギーを防ぐには洗うのが一番です。しかし、洗うことで劣化してしまいますよね。毛布であればガサガサとかたくなりますし、タオルケットであれば縮れてカチカチになり、乾きにくいものです。
でも、パシーマの場合は軽いですし埃がありません。もともと清潔で、洗うともっとふっくらします。
最初は布団自体に何もついていないので、皮膚に当たっても問題ありませんが、一週間使うとそうではなく部屋にある色々なものがくっついていてしまいます。それからが問題ですね。
では、どうしたらそれらを減らせるのかというと、平成4年くらいに厚労省白書で寝具の使い方について言及がありました。「布団は洗えないので日に干してたたき、掃除機で吸い取りましょう」と。布団は洗えないという前提が最初からあったのです。
かつて、得意先から布団は洗わなくてもいいものを持ってきて欲しいと言われていたのに、そこから数年経って、東洋紡が洗える布団を販売してものすごく反響がありました。
私たちがいくら口を酸っぱくして言っていても通らなかった布団を洗うことが、東洋紡がPRしたことで通ったのです。
じゃあ、洗えるとはいうものの毎週洗えるかというと良くて年に1、2回くらい。しかし、早いとダニなどは2週間で増えてしまいます。
洗うとどれくらいアレルゲンが落ちるのか研究した方がいるのですが、およそ9割が落ちるそうです。全てが水溶性のタンパク質なので、皮膚から溶けて入るわけですよね。
私たちの体にアレルゲンが入る経路は3つあり、一つは呼吸、二つ目が食物、そして三つ目が皮膚です。食物は私たちの守備範囲ではありませんが、皮膚と呼吸は私たちの方である程度は対応できるのではないかと思っています。
アレルギーを語る際にコップ理論というのがあります。これは、アレルゲンが自分の容量を越えてしまうとアレルギー反応が起こるけれども、それ以下であれば症状は出ない。つまり、治ったわけではないけれども、それと同じ生活ができるということを表しています。
ダニがゼロでゴミがゼロ、アレルギーがゼロの状態である必要もないし、実際にそういうこともできません。週に一回でアレルギーが出ないのであればそれで十分ですし、場合によっては洗濯頻度を上げれば良いわけですよね。
1週間に2回でも3回でも、洗って干しておけば速く乾きますので、そうすることでまともな生活を送ることができます。ただ洗うだけだと言われそうですが、実はそれが重要です。私たちの布団は脱脂綿から作っているのですが、繊維の短いものは一切入れておらず埃が少ないことも特徴です。
パシーマはどのくらい長持ちしますか。
実験したところだと、100回洗濯しても大丈夫です。1週間に1回洗濯するのであれば、2年ですね。洗い替えなしで。
実際には倍くらい使っている方もおられますが、概ね2年は持つということです。そうすると、布団が7,500円なので1日10円の計算になりますね。
それが終わってから小さく切り、雑巾として使っていただければ元は取っていただけるかと思います。
農薬や染料についての検査もされていますね。
そうですね。昔のドイツで、良く精練すれば農薬も落ちるという研究がありました。とは言え、資料をたくさん持参して色々なところへ行っても、誰もそういう話には興味を持っていませんでしたね。
ただ、無農薬だからといって精練を良くしてないと吸水性が悪いですし、寝具としての性能が落ちてしまいます。例えば、ダニが通らないように加工していても、結果としてビニール袋と同じ状態ですよね。
そんなところで寝ても、良く眠れて体が良くなるのかというとそういうことはなく、ダニが多少いたとしても睡眠を重視したものが良いですよね。メンテナンスを嫌がらずにしてもらうことで、まともな生活ができていくと考えています。
メンテナンスをせずに済まそうというのが今までずっと来た道です。それに今は少し逆らって、洗濯はしましょうということですね。
現在、どのくらいの方がパシーマをお使いになっているのでしょうか。
販売している枚数は、年間10万枚くらいになります。何年かするとリピートしてくれていると思うので、単純に掛け算にはなりませんが。
パシーマはどちらで購入することができるのでしょうか。
今はインターネットでも購入できますが、弊社では最初は取扱していませんでした。しかし、ある時、お客さんからこう言われたのです。「このお店で買ってくださいと紹介があったから電車賃をかけて買いに行きました。奥深い布団屋さんだったのですが、中に入ろうとするとまず20万円や30万円する高い布団の説明ばかり受けて、奥にあるパシーマまでたどり着くことができずに結局、買わずに帰ってきてしまいました。」と。
そういう人もいますし、日中忙しい方もいるということで何年か前にネットでも購入できるようにしました。ただ、ネットで購入すると送料がかかってしまいます。布団屋さんだと送料はかからないので、極力お店は紹介しながらも購入される方が困らないレベルでネットショップも運用しています。
その辺りはさじ加減ですが、実はふるさと納税でもパシーマを扱っています。お店のホームページを開くとふるさと納税のリンクが目立つところにあるので、今すごく注文が増えています。
この間、たまたまある展示会でパシーマをふるさと納税でもらったという方がいたので、「それは、ふるさと納税の中にパシーマがあったから買ったのですか。」と聞いたところ、パシーマがあるからふるさと納税をしたと話されていて嬉しかったですね。
自治体の中で今、一番売れていて先月は600件、今月もすでに600件注文がきています。コンスタントに売れていますね。
ただ、納税しても生産が間に合わないので2、3か月待ってもらっています。現在、工場を建てているところですが、人が増えないと生産はなかなか増やせないですね。皆さん、ミシンを踏まないのでだんだんと縫製ができる方も減っています。
こちらでは、製綿から染色、乾燥、裁断から出荷まで一貫して行なっています。検品もしていますが、不具合を発見する作業になりますので、それらを考えるとなかなか生産が伸ばせない状態です。
化学物質過敏症の人は使える布団がないということで、パシーマを購入したという口コミのネットワークを使って広がっている感じです。糊はついていませんが最初はパリパリとしています。しかし、一度洗うだけでもかなり柔らかくなり良さがわかってもらえると思います。
<まとめ>
記事はいかがだったでしょうか?
布団で睡眠が大きく違うことをご理解いただけたでしょうか。私はこの取材以降、パシーマで寝ていますが、やはり寝心地が違うと感じています。
最初はごわごわしますが、洗濯2~3回していくとだんだん角が取れていく感じがしますし、丸洗いで何も変なものがないので、安心して眠れます。
やはりよくご存じの方も多く、ネットでは売り切れているものも多いようです。
価格もお手頃なので、ありがたい製品だと思います。
すぐに手に入れたい方はパシーマサイトから代理店さんをチェックすると良いようなので、ぜひお試しくださいね。
梯社長、年末のお忙しい中、貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました!
この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
<関連サイト>
パシーマ
http://pasima.com
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